私は20年間大学病院で看護師をしていました。
大学病院では集中治療室、救命救急センター、手術室、血管造影室、消化器内科・外科、脳神経内科・外科など、様々な分野に関わり、 0~90歳以上まで、50.000人以上の患者さま、ご家族と接してきました。新人看護師職員指導、職員指導、学生指導に10年。感染・医療安全対策研修を7年受け、数多くのスタッフへの教育にも携わってきました。
辛いことも楽しいことも、本当にたくさんのことがありましたが、すべてが大切な経験でありさまざまな学びにつながったことに感謝しています。そして、この大きな大きな経験をもっと活かしていきたい。その想いに延長に今の私があります。
20年間看護師として働いてみて思う
『看護』への想い
私は救命センター・集中治療室での勤務が長く、そこで得た知識・技術・学びの全てが私の看護師の元となっています。
一般病棟では元気になって退院していく患者さまが多い中、超急性期の現場では治療の甲斐なく亡くなる方も数多くおられます。
三次救急・ドクターヘリも併設されており、24時間休む間も無くショック状態の患者さまが搬送され、その他にも術後の状態が不安定な方や病棟急変の患者さまの入室があります。
命が永遠では無いのは自然の摂理。
しかしながら、胸が締め付けられる程に切ない看取りの場面を幾度となく経験しました。
私にしかできないことって何だろう…
私は看護師として何ができるのだろう
新人看護師として集中治療室に配属された時、学生時代に死ぬ程勉強した解剖生理や看護技術が何の役にも立たないことを実感しました。
これが、新人看護師が必ず陥るリアリティショック…。
脳・心臓・骨・内分泌 …とにかく全身の解剖生理が頭に入っていないと患者さまに触れることすらできない。
ショック状態の患者さまは、身体にちょっと触れただけで血圧が変動してしまいます。
新人看護師の頃は、その循環動態変動の機序が全く理解できなくて、自分にできる看護をしなければ!!!と患者さまに触れて、血圧急降下…なんてこともありました。
心電図の波形もまともに読めない、人工呼吸器のアラームにも対応できない。薬を作ろうにもγ計算ができない…。
当時の私は泣くこととインシデントレポートを書くことしかしてないんじゃないかというほど、本当にダメな看護師でした。
その上、食事も取れないし眠れない…、病院に着くと全身蕁麻疹が出て点滴してから仕事に就くといった、周りからみたら相当大迷惑なスタッフだったと思います。
そんな私が職員指導者になるまで集中治療室・救命センターで看護師として働くことができたのは…集中治療の看護が好きだったからです。
未熟な看護師として患者さまと関わる自分も嫌でしたから、とにかく死ぬ程勉強しました。
知識がついてくると自然とアセスメントができ、徐々に患者さまの個別性に応じて根拠に基づいた看護を提供することができるようになります。
ほんの少しのことでも自分が行った看護によりデータが良くなっていると、本当に嬉しくて勉強すること・知識や技術を身につけることが、楽しくて仕方がありませんでした。患者さまと関わるほどにちょっとした変化や異変に気づけるようになり、何かがおかしい…といった経験による感覚も養われていったように思います。
私は、臨床現場に身を置くものとして、患者さまとの接点を何よりも重要視してきました。患者さまやご家族と接すること、ケアすることで成長させてもらえたと思っています。
医療や看護は「人」がつくり出すものであり、医療の質や看護の質は、それらを提供する「人」次第です。
私は指導者として、私に任された「人」たちの、看護への想いを引き出し、その想いが実践につながるようエネルギーを注いできました。それが何よりも患者さまに最高の看護を提供することにつながると考えていたからです。
私も含めスタッフ一人一人の仕事に対する姿勢を養い、やりがいを醸成し、やりがいを支援し、生き生きと活動できる環境を作ることが私にできる「看護」と信じてやってきました。
ときには遅々として進まないことに焦りを感じ、ときには勇み足になるのを制御しながら…多くの反省があり、多くの学びがありました。
私自身が患者さま・ご家族・スタッフからたくさんのパワーをいただき、共に自己成長を実感することができました。
「看護の仕事に誇りをもつ」
私は20年の看護師経験を経て、あらゆる疾患・症状・状況を経験し知識・技術を学びました。ですので、人を「看る」ということに自信と誇りを持っています。
これまでの経験で培ってきた知識・技術を、健康管理・予防という観点から、もっと身近なニーズに応えられる場で活かしていきたいと思っています。
最後に…
私は一人の看護師である前に、一人の人間でもあります。
自分が幸せであってこそ、人も幸せにできるはず。
大切なことは、自分らしい人生を送ること。
そんな私たちだからこそ、患者さまやご家族の力になることができると思っています。